思念具現化
嘲るように、
「お前程度の吸血鬼、屠るのは容易いのでな」
染められた朱色の空に向かって哄笑する。
その瞬間玲於奈は『思念具現化』を発動させ、冷気の刃を塔也に向ける。四方から放たれた薄く、鋭い刃は塔也の、
「くくくく。どうした?」
「……くっ!」
塔也の眼前で音もなく停止している。
苦しげなうめきは玲於奈。
(……方程式が、完全に見極められている!)
力の差が、考えていたよりも遥かに大きい!
「そら、返すぞ」
何の動作もなく、その一言だけで塔也の寸前で停止していた氷刃がビキビキと巨大化していく。さながら槍のような長大さの氷槍が三人目掛けて突き進む。
昇を抱きかかえる瑞樹は動く事が出来ない。
玲於奈も『思念具現化』によって新たに空間から生み出した火球を氷槍に放つが、火球は呆気なく霧散していく。昇との戦い、何より朱雀との攻防で玲於奈は激しく消耗していた。
それでも諦めずに『思念具現化』で火球を注がせ、大鎌を構える玲於奈の眼前に、一つの黒い影が割って入った。
右手には一本の剣。ルーンの施された剣だ。
肩辺りで乱雑に切り揃えられた頭髪が、さらっ、と流れた。
「黒き力を宿せ、我が剣よ。暗黒より産み落とされし静寂を引き連れ、その波動を放て!」