青龍
刀印を指し示された朱雀は、天に向かってもがき苦しむよう翼をばたつかせている。
「朱雀!」
瑞樹が吃驚したように印を組み直し、朱雀に向かって刀印を伸ばす。塔也が瑞樹の朱雀の支配権を奪い取ろうとしているのだ。彼女の頬には珠のような汗が浮かび始めるが、塔也の顔は涼しげだ。
「さて、瑞樹はこれで動けまい。あとはお前達三人か」
字久達に眼を向け直し、再び九字で、今度は先程とは順を変えて組み始める。
「古より水を司りし尊き龍よ、命の源である青き力を従えてここに在れ」
厳かな呟きと共に、周囲から神々しい光に満たされた水が奔流し、青い鱗をその身にまとっていく。四肢からは巨大な鉤爪が伸びており、背からはえているのは二対四枚の翼。その体は朱雀が炎で象られているように、全て水で形成されている。
「……十二神将『青龍』」
瑞樹が、苦しげな口調で呟く。
「『朱雀』が討たれ、瑞樹君と支配権の争いまでしていると言うのに……大誤算、ですね。差がある事は百も承知していましたが……まさかここまでとは……!」
字久の、切迫した口調の独白。
四人の表情は、限りない絶望に覆われていた。