字久
状況にそぐわぬ返答をし。
不敵にも、口の端を吊り上げた。
「……オマエを、信じるよ」
ぼそ、と吹き荒れる嵐の中で呟き、司影は眼を閉じ右膝をついた。
「冥界より来たれ、暗黒の亡者よ。滅の波動を伴い、我が指し示す方位を駆逐せよ!」
刀身に昏い光が宿ると、柄に添えられた右手から不可視の衝撃波が地面を抉りながら昇に迫る。衝撃波は、方円の直前までアスファルトが削り取り。
その向こう側からは嘘のように耳をつんざく音は聞こえてこなくなった。衝撃波が、消えたのだ。
「……後輩は、先輩よりも先に死んではいけないものです。死んだら墓から貴方の亡骸を掘り出し、地獄まで叩き起こしに行くので覚悟なさい」
字久は手元に残った一本のルーンソードを構える。
「いつ、そんな不文律が出来たんです……でも、字さんにしちゃ、随分短い励ましの言葉で」
苦笑しつつ昇は字久を見つめる。
「ルーンを求めし偉大なる神オーディンよ、我が呼びかけに応えよ。汝の叡智に眠る最後の鍵を、一時だけ貸し与えたまえ!」
電光の如く速度で剣を用い、空間に光の文字が宿される。周囲を揺り動かしながら、白い一筋の光条が、昇目掛けて注がれた。音もなく突き進む光速の一撃は。