刻印
昇の顔は、生か死か、という極限状態でも笑みを作っていた。
「誰かが困ってりゃ助けてやるのが、友達ってもんでしょ。人は不完全だから寄り添うんですよ。それを否定する必要なんて、ない」
玲於奈の心を汲み取ったかのような一言に彼女も頷き。
「……ありがとう」
微笑んだ後、眼を閉じる。
鎌の柄を地面に突き立てる。周囲に放電が起こると共に栗毛色の頭髪が持ちあがる。高められた『思念具現化』が、巨大な一つの雷光を昇の頭上に落とした。
轟音を起こし、アスファルトを揺らしながらも。
彼は、なおも両の足で大地を踏み締めていた。
昇はカッ、と眼を見開き、
「古より伝えられし概念の具現よ、今こそその真の力を解き放て」
「暗黒より訪れし偉大なる闇よ、ここに破滅と破壊の宴を開け」
攻撃を発動するのに充分な魔力を蓄えた二人が同時に詠唱に入る。
昇は右手を左手に添え、『刻印』が刻まれた掌を塔也に向ける。
塔也は何かを抱きかかえるように両手を中空に差し出していた。
「歴史の波、悠久の力を従え、時に逆らいし者に戒めを下せ」
「影なる光、邪なる混沌を伴い、全ての未来を飲み込め」