三日月の絆その6

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三日月

三日月

「……さん……にい……」

「の…………ばかや……」

音が、世界から断絶されている。

何を言われているのか、全くわからない。

「のぼ……しっか……なさ………」

「おき……はし……くん……」

うるさい。

どうして、こんなにうるさいんだ?

眼を開けるのも億劫だと言うのに。

少しずつ、音が明確に聞こえ始める。

「兄さん、しっかりして下さい! 兄さん!」

「昇! 約束しただろ! 帰って来いっ! この馬鹿野郎!」

全身が、どこかふわふわした力に包まれている。

体が、乱暴に揺さぶられている。

「昇君、意思をしっかりもちなさい! 意思力を高めるんです!」

「端山君……お願い、起きて!」

どうして、これらの声は、こんなに必死なんだろう?

どうして、これらの声は、こんなに暖かいんだろう?

徐々に意識が鮮明になり、昇は眼を重たげに開く。

「…………」

皆が、一様に自分を囲み、覗き込んでいる。

すると。

冷静さをどうにか装おうと、でも声だけは泣きそうな瑞樹の声がピタリ止まり。

唾を飛ばし、喉をからしながらも大声で叫び続けていた司影は硬直し。

焦燥の表情で昇を励ましていた字久はどこかほっとしたように。

涙を静かに流しながら願っていた玲於奈はじっと昇の眼を見つめている。

黒き雲が払われた空には、一つの三日月。

弱々しく、不完全な光ながらも。

懸命に、自分達を照らしてくれる三日月。