なぶり殺し
「……世話、かけたな、瑞樹」
上体をどうにか起こし、風に切られた右腕で瑞樹の頭をなで、
「……帰って……きたぜ、司影」
血だらけの左手で司影の手をペチリと叩く。
「これで……字さんにも、地獄まで追っかけられませんね」
不敵な視線を字久に送り、頷きあう。
「……終わりましたよ、全部」
痛む体に鞭打ち、口元を血で彩りながら玲於奈に向けて微笑を浮かべる。
昇の背後では、いまだに西側校舎の一部分が燃え盛っている。東側の大部分は塔也が産み出した『朱雀』によって炭化していた上に、昇の『開封の儀』により完全に破壊されてしまっていた。
皆が皆の顔を見つめあい、笑い声をあげようとしたその時、
「くくくくっ! はははははっ!」
狂った嗤い声を十の耳が捉えた。
昇を除く四人は即座に立ち上がり、音源を顧みる。昇も片膝を突きつつ、頼りない足取りでどうにか立つ。
「切り札は全て使った。余力も、もうあるまい。私の勝ちだ!」
紫のコートは焼け焦げ原型を留めていない。しかし血だらけになりながらも、塔也は三日月に向かって両手を広げ高々と宣言した。
もう、皆の魔力は尽きている。
ここにいては、塔也になぶり殺しにされるだけだ。
「……皆……俺を置いて……逃げろ!」
切り札は、使ってしまった。
魔力は、全員、すっからかん。
勝ち目は、もう、無い。
だが昇の言葉を無視するかのように、四人は昇を守るように彼の前に壁を作り、塔也から眼を離そうとしない。