黒衣の天女
「聞こえて……ないのか! 逃げろって」
「うるさい! 黙ってろ!」
剣を正眼に構えたまま、背を昇に向けている司影の一喝が警告を遮った。
「兄さん。そんな言葉を、私が聞けると思っているんですか?」
次いで、横目で責めるように瑞樹が言葉を紡ぐ。
「勝ち目が無い訳ではありません。諦めない限り勝機はあります」
塔也を凝視したまま、力強く皆を鼓舞する字久の声。
「……友達を、見捨てる訳にはいかないでしょう?」
少し怒ったように眉を吊り上げている玲於奈。
四人の背を見つめた後、昇は、無言で地に眼を伏せる。
……俺は、周りに恵まれている……
「……悪い……」
だからこそ、死なせたくない。
守りきってみせる!
「……全員で……生きて帰るぞ!」
ガクガクと笑う膝を両手で押さえつけ、腰を落とし、昇はどうにか自身と皆を叱咤する声を大きくあげる。
これを見た塔也は不快そうに口元を歪め、
「友情? 馬鹿が! そんなものが何の役にたつ! 絆? 永遠の前では霞んで見えるわ!」