不測
「……どうして、楠木さんが?」
茫洋と問い掛ける玲於奈に、
「……正直、よくわかんないんだ。どうしてグラウンドにいたのかもわかんないし、気付いたら字久の奴が眼の前にいて『力を貸しなさい』って強引に……この剣も、あいつが使えって」
司影は気が進まなさそうに右手に握られている剣に眼を向ける。
(手短に説明します。今、我々は危機的な状況に陥っているようです。化物のような魔術師が、この付近にいます。ひょっとしたら、昇君か玲於奈さんを狙っているのかもしれません)
そう言って、字久はこの剣を手渡したのだ。
この剣があれば、『魔力』を引き出せる、と。
確かに体は信じられないような速さで動くし、訳のわからない呪文もポンポン口から出てくる。挙句の果てに先程のような変てこな力も使えてしまった。
司影としては、体が自然に反応してしまうのだ。実際には、ルーンに刻まれた魔術方程式を媒体とし、封じた『死影』としての力を、司影に使わせているのだが。
(どうしてこんな服着ているのかもわかんないし、わかんないだらけだけど)
「ところで、アイツ、なんなの?」
そう言って司影は剣を正眼に構えつつ塔也を睨み付ける。
「叔父様! これはどういう事ですかっ! どうして兄さんを殺そうとするのです!」