端山昇
「小僧。これをお前にやろう」
おぼうさんはそういって、むねのなかから、しろいてぶくろをだした。
「これを四六時中身に着けていれば、お前の『魔』は他の『魔』を引き寄せまい」
おまもり、みたいなものなのかな?
「サイズがあわなくなったら、内側に縫い込んでいる生地だけを取り出し、それを手袋に縫い付けておけ」
? ? ?
「今は、わからなくとも良い。その内、わかる時が来る」
そういって、おぼうさんは、じめんにおいたつえをとってたちあがった。
「ねえ……おぼうさんに、もう、あえないの?」
とても、ふあんだった。
おいていかれそうで、ぼくはいやだった。さびしかった。
「ぼく、いやだよ。おぼうさんと、もっといたい。もっとおはなししたい」
なみだがでそうになるめを、ぐしぐしこする。
すると、
「小僧。出会いに、別れはつきものだ」
おぼうさんは、ぼくのあたまをくしゃくしゃとなでた。
「お前は、立ち直った。もう、立派な一人前の人間だ。もはや私は必要ない。そして、私を必要とする者はまだまだこの輝きの下には溢れ返る程いる」
おぼうさんのてが、ぼくのあたまからはなれる。
「そして、私同様にお前を必要とする人間が、お前の歩む道の先にいる」
ぼくは、ひくひくいいながらおぼうさんをみあげる。
「小僧。お前と私は、同じ月の輝きの下にいる。孤独が募ったならば、月を見上げよ。私は、その輝きを見てお前を思い出し、お前の行く末を祈ろう」
そういって、おぼうさんはぼくのてをにぎった。
「お前の……端山昇の行く末に、幸在らん事を」
おぼうさんはそういって、せをむける。
おぼうさんが、ぼくを『こぞう』じゃなくて。
『のぼる』ってよんだのは、これがはじめてで。
そして、さいごだった。