老骨
「やれやれ、事後処理は疲れますね。塔也翁の件を揉み消し、暮崎さんの存在を隠す報告書を書き上げるというのは老骨の身には堪えます、特別報酬を出して欲しいくらいです」
「十八で老骨だなんてどうするんですか。愚痴は聞きたくありません。報酬も規定通りに支払わせて頂きます」
ソファに身を沈める字久の口上を問答無用で叩き切ったのは優雅に紅茶を飲む瑞樹だ。
字久が話しているのは数日前『陰陽寮』に提出した資料についてだ。何しろ新聞にデカデカと乗るほど学校を破壊してしまったのだから、全ての出来事を隠蔽しようにも不可能。
そこで二人は光洋高校に巣食っていた『怨念』を処理中に、突発的事故が起こってしまった事にしたのだ。
『陰陽寮』から調査員が来ていたが、不幸中の幸いか、塔也の力は桁外れだったために相当量の残留魔力が存在した。更に『永遠』を求める彼の妄執と、昇が自身の提案を受け入れなかったという現実に対する拒否感情が、根強く場には残っていた。それを『怨念が残した強大な残留魔力と負の意思力』として感知した調査員も『事故はやむを得なかった』と判断し、事態は終息した。
「まあ塔也氏は端山家で育ててくれるようですから問題はないですね。ああ、問題と言えば昇君に言われてしまいました。『字さんがもっとはやく正体を打ち明けてくれていたらもっと別な対応を』」
「兄さんはとにかく危険な事柄に首を突っ込みたがります。字久さんの正体を知ったら、これから貴方への協力を無理矢理買って出そうなので正体を隠した上で身の安全を確保して下さい、そのためならば多少手荒な手段を用いても良い、と私は言いませんでしたか」
それも全てご破算ですけどね、と瑞樹はティーカップを手元に置く。完全に字久の言葉を止め、理論と言う武装を用いて迎撃し尽くしている。