三日月の絆その6

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三日月の絆

三日月の絆

一つは、男の口調で、女の声音。

一つは、あまりにも毒々しい言葉使い。

一つは、場に似つかわしくない、軽薄かつ口数がやたら多い男。

もう一つあるのだろうが、彼女は小さな声で喋っているのだろうか。その声は聞こえてこない。

手袋をし、腰を浮かしかけた所で一つの影を昇は捉えた。

錫杖に、編み笠。白い手袋と首にかけている数珠。足には足袋と草履という時代錯誤なもの。

忘れようにも、忘れられない。

 昇の推測を肯定するかのように、シャン、と錫杖が鳴った。

「久しいな、小僧」

「……どうして」

体を起こし、呆然と問う昇には答えず、

「成程。あれがお前の仲間、という訳か」

編み笠を指で少しだけ上げる。低い声で呟き、わいわいと迫ってくる皆を見て鷹揚に頷く。どこかその仕草は、喜んでいるようにも見える。

「良き仲間に、恵まれたようだな」

「……はい」

月光をまとった彼を見上げながら、それだけは、即答出来た。

自分には、過ぎた友人だ。

錫杖が夜にシャン、と音をたてる。

「さて。私には為すべき事がこの先の地にある。今回、ここに寄ったのはそのついでだ」

「……そうですか」

少し残念そうな声が出てしまった。

それでも、もう、あの日のように彼を止めたりはしない。

彼には彼の。

自分には、自分の待ち人が。

この三日月の輝きの下で、待っているだろうから。

「小僧」

すぐに行くのかと思っていたが、まだ質問が残っていたようだ。

彼はこちらを向き、編み笠の下から問いを発した。

「今、お前は、不完全である自分をどう思っている?」

「小さな不満はたくさんありますけど、概ね好きですよ」

照れも何もなく、本心をありのままに語った。

「俺は、不完全な俺だったから、貴方に会えた。自分を見つめ直せたから、皆と巡り合えた。そう思います」

月光が注がれる彼を見上げる。

編み笠の下から見えた色の違う眼は、この上なく優しそうだった。

「お前は、私が期待していた以上の人間に成長したようだな」

その言葉には、昇も流石に恥ずかしかったのだろう。顔を赤くして俯く。

「昇。お前を支えてくれる仲間を大事にな」

そう言うと、彼は踵を返して夜の向こうに歩み去っていく。

しばらく昇がそれを黙って見つめていると、四つの声がはっきりと聞こえてきた。

「ちぇ、うるせえ奴等が来ちまったか」

しょうがない、と言いつつもその顔には笑みがこぼれている。

「おぉぉぉおい! こっちだこっちぃ!」

欠けた月の輝きの下で、昇は手を振り、皆を呼び寄せた。