三日月の絆その6

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塔也翁

塔也翁

すると脇から表情は変えぬまま、しかし烈火の如く怒り狂った口調で瑞樹が再度塔也を糾弾する。

「恐らくは塔也翁がこの事態の元凶だからでしょう。違いますか?」

対称的なまでに、字久は無機的な問い掛け。

それに塔也はふっ、と鼻で笑う。

「良かろう、冥土の土産にでも話してやろうか。話は三十一年前。とある吸血鬼がヨーロッパから日本に落ち延びて来た時の事だ」

玲於奈は変わらず凍える眼光で塔也を睨み付けている。

「『錬金転換』の方程式を求め、私は播磨の血族を三十名程引き連れ、その吸血鬼の一族と対峙した。何しろ五百年の時を生きた吸血鬼が相手だ。後にも先にも、死ぬかと思ったのはあれが最初で、そして最後だろうよ。私も、今ほどの力は身につけていなかったしな」

束ねられた、白黒入り混じった頭髪が焦げ臭い風に揺れる。

「それでも、私はどうにかその老吸血鬼の片腕をもぎ取る事に成功した。そして」

「お婆様に、呪術を用いた訳ね」

司影はギョッとしたように後方の玲於奈を見やり、字久と瑞樹はちら、と塔也に隙を見せぬよう彼女を見た。

「八年前、私は『時間退行』という対吸血鬼用の呪術を編み出すと同時に、もう一つの研究の成果を現した」

しかし、塔也はどこ吹く風、というように話を続ける。

「呪術にはいくつかの欠点がある。『返りの風』はその代表的なもの。他にもその魔力を逆探知し、呪術を行使する者が発見される、というデメリットもある」