魔封じの刻印
右手を火の粉が校舎から舞い散る夜空に掲げ、
「それを防ぐために、私が奴に施したのが『魔封じの刻印だ』」
その人差し指で昇を指す。
「……それで彼の『魔封じの刻印』が、貴方の魔術にだけは効果を現さなかったのね」
玲於奈の問いに、『正解だ』、と言わんばかりに塔也は笑みを閃かせる。
「当然だろう。奴が私に牙を剥く可能性が無い訳ではないからな。ちょっとばかり、他の方程式を『刻印』に組み込んだのだよ。もっとも数年もすると奴が肉体強化の魔術だけとはいえ、行使出来たのは誤算だったが」
まあ、大した誤算ではないがな、と塔也は鬱陶しそうに呟く。
「じゃあ播磨から兄さんを追放したのは……!」
「無論、『刻印』に組み込まれたその方程式を、他の播磨の者に発見されないよう、手を回したからだ。見つけられるとは思えなかったが、万に一つを考えて、な」
くくく、と暗鬱な声が四人の鼓膜に響く。それに対し瑞樹は昇を抱きしめながら唇を噛むだけ。
「そして数年の時が経ち、脅威たる二人の吸血鬼が消えた時、私はいくつかの情報を意図的にもらした。お前とその兄がこの街に訪れるように。もっとも、お前の兄は予想外に脆かったようだが」
塔也に跳びかかろうとする玲於奈は、いつの間にか背後に回っていた誰かにその肩をつかまれる。