殺害偽装
振り返った玲於奈が見たのは、鷹の如く険しい目付きの字久。ちらり、と彼は瑞樹を見やり、彼女もまた字久に頷き返す。
「お前がこの街に訪れた事を知った私は、温めていた計画を行動に移した」
「それが、自身の殺害偽装ですね」
字久は玲於奈の肩から手を離し、代わって前に進み出る。
「吸血鬼に施された『錬金転換』の方程式を、完全な形で回収したかったのでな。他の播磨の者を使っては、私が奴等に呪術を用いた事が発覚してしまうかもしれん。呪術を用いていることが『陰陽寮』に知られるのは勿論、播磨の者に洩れても私は追われる身になりかねん。そこで私は使い魔を行使し、自身の殺害偽装をする事で私自身が動きを取れるようにしたのだ」
「並みの魔術師ならば使役はおろか、具現化も難しい人型も貴方ならば容易でしょうね。ああ、あの『カラス』も貴方の使い魔の一つですね? 常に暮崎さんや昇君の周囲、それから私も監視していたようですが」
字久の確認に塔也は微笑するだけ。見る者を不快にさせる見下した眼差し。
「我ながら迂闊でした。死体をきっちり確認した訳でもないのに、状況と証言で貴方は死んだものと思ってしまった。壁の血痕など、あらかじめ輸血用のパックでも使って抜いておけばいくらでも作れるトリックですし、何より、証言者であるメイドさんの口を封じなかった事を真っ先に疑問に思うべきでした。貴方のこのトリックには、証言者が不可欠